まだまだ投資本を読んでいる。本を読んだからパフォーマンスが上がるわけではないというのは分かっているが、やっぱり楽しくて読んでしまうのでまとめる。
読んでみて思うのだが、長期投資の利益源泉は他人の評価と自分が考える企業価値のずれである場合が多い。きちんとその辺りを考えられるようにファイナンスの教科書を読むことや、企業自体の稼ぎ方についてよくよく考えるのが肝要である。
と思うと、投資のパフォーマンス向上につなげるにはこの手の本を熱心に読むよりもやるべきことが多い。しかし、射倖心は脳のガソリンである。
大まかな内容、留意して読みたい点
モーニングスターのアナリストである筆者が、企業の他の企業に対する覆しがたい優位性である堀(モート)に重点を置いて解説した本である。
堀は規模によるネットワーク効果だったり、ブランドだったり、規制だったり、その種類は問われていない。とにかく、競合が入って来にくかったり、入って来たとしても自社の脅威にならないような状態を堀があるとしている。
この本では、堀とはどういうものであるのか。堀があると何が嬉しいのか。堀の種類や、堀と勘違いしたケースなどを章ごとに個別企業のケーススタディ付きで紹介している。
筆者自身の投資の腕前については、米のモーニングスターがアメリカでどういう立ち位置なのかよく知らないので、あまり語れることがない。日本のアナリストが書いた投資本は一度読んだが「この銘柄を勧めていたがやっぱり当たって10倍になったよ」というようなものがあって、一度読んだがあまり参考にはならないと思った。
理由としては、当てたものと外れたものを両方併記してくれないとどんな鉄砲だって数撃ちゃ当たる。というのと、自分自身のパフォーマンスではないから、どれだけあの時言ったことが当たったと言ってようがそれは実際に自分のお金がかかっていない時だからではないの? という疑問符がつくからだ。
この本に関しては、分析が外れた銘柄も含まれているので多少マシ。自身がどういう運用をしているかは、正直本からではよくわからなかった。
本の気になったポイント
堀という言葉で思うのが、堀があると判断して投資したとして利益率が落ちていって上手くいかなかったら「堀がなかった」として、成功したとしたら「堀がある事業はすごい」と言うような言葉遊びにならないのか? という懸念はある。
投資が成功した企業に堀があった、投資に失敗した企業には堀がなかった、とするなら投資に成功した場合は常に堀があったおかげになる。
利益幅をもたらすような事業構造の事を堀というので、事業の良さは大体が堀に起因することになるのは分かるのだがなんとなく腑に落ちない部分もある。
重要な点は、「優れた事業構造である」とした判断が間違っていたか、もしくは構造の変化で変わってしまったという事実であって、堀があったかどうかの話ではないというのを忘れないようにした。
というのと、投資の成功/失敗も堀の有無だけでは決まらず、さらには対象の企業が儲かっているかでも決まらない場合が多々あるということである。
本を読んで上手くいきそうな気がしても、結局目の付け所がシャープでないと意味がないのだ。
他の投資本との比較
この本は言うなれば、「素晴らしい企業をそこそこの値段で買う」という投資の格言の実行を手助けする本である。
「バフェットからの手紙」、「マンガーの投資術」、「完全なる投資家の頭の中」などと毛色が似ている。バフェットがマンガーにインスピレーションを受けて切り替えた(と言われている?)投資方法の細かい解説付きという感じ。
毛色が似ているとした本よりミクロよりで、企業ごとの話が多いイメージ。
堀の話でいうと、明治・大正の時代から続いて今も利益を出している上場企業が日本には結構ある。この本において『堀は、経営陣の優秀さに頼るものではない。つまり、配られたカードでどうプレーするかではなく、初めから持っているカードのほうが重要なのだ。』とある。
見方によっては、日本企業は堀のある企業でいっぱいなのではないだろうか。実際、毎年一定の配当を出しても健全財務で生き残っている会社も割とあるのだから、そういうのこそが「堀」なのかなあと思ったり。
まあ、堀のある会社の株を買えば上手くいくわけではないのだけど。