日本株 株式投資 トクヤマ 4043 銘柄分析

大手総合化学工業メーカー、トクヤマの概要

トクヤマは、1918年にソーダ灰(炭酸ナトリウム)の国産化を目指して岩井勝次郎によって設立される。現在、ソーダ灰の製造を行っている国産唯一のメーカーであるようだ。

ソーダ灰はトクヤマのHPによると 板ガラスおよびガラス製品類の原料、石けんの原料、鉄鋼業での脱硫剤(脱硫とは、有害な硫化水素を無害化するためのプロセスらしい)などに使われている。

その後、セメントや無機化学品など様々な分野に進出し、現在は半導体用シリコンの世界大手でもある。

トクヤマの2020年度事業別売上

化成品がメインかと思いきや、売上高として一番大きいのはセメントであった。

次いで化成品、電子材料と続いている。電子材料は、半導体用のシリコン・シリカ・放熱剤などであり、半導体自体の素材と半導体製造プロセスに使われる素材を作っている。中でも、半導体用の多結晶シリコンは世界シェアの30%を占めている。

その他、ライフサイエンスには歯科器材やメガネレンズ用の材料などが含まれている。

トクヤマの2020年度地域別売上高

地域別の売上高では、日本国内での売上が圧倒的である。

日本国内での製造・販売だと材料の原料の輸入に円安が響きそうで、現在の状況は追い風にはならなそうである。

また、2021年のIRレポートでのトップコミットメント内で触れられているように、徳山製造所で石炭火力発電所に依存したエネルギー多消費型の事業構造で、現在はそこからの脱却を図っている。

トクヤマの業態・業績の分析

トクヤマの2019年度~2021年度売上高と当期純利益

2021年は、原油高の影響で減益したものの2020年度と比べるとコロナの影響が軽減し、半導体関連製品の販売増が利益に貢献している。

また、石油価格製品の価格上昇も利益にプラスに作用している。

売り上げで見るとセメント製品が減少し(収益認識基準有りの場合)、結果的に減益している。

また、セグメントでは「その他」でまとめられる部分でも売上が減少していて、2020年度から2021年度の売上の減少はこの二つの分野に依り、その他の分野では売上・営業利益は増えている。

セメントは原料コストの増加によって赤字に転じている。

今後は、「電子」・「健康」・「環境」の3領域を新たな成長事業として位置づけして、事業ポートフォリオの売上高水準で50%を超えることを目標としている。

その中で環境分野の事例として挙げている太陽電池モジュールのリサイクル技術は、個人的にも特に注目している技術だ。

太陽光発電システムの導入に対して、使い終わったモジュールの廃棄が問題になっている。2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題 資源エネルギー庁HP

処理方法のルール策定や運用で解決できる点もあると思うが、モジュール自体がリサイクルできれば言うことはない。

太陽光発電のモジュール自体は、国内での導入が加速していくという予測がある。日本市場における2030/2050年に向けた太陽光発電導入量予測(2020~21年版)

なので、このままリサイクル技術が生まれなかった場合には廃棄されてしまうモジュールの数も増えていくことだろう。ただ、直近作られた物が実際に廃棄されるタイミングは20年後とかになるので結構遠い未来ではある。

逆に今まで増えてきた過程で確認する。太陽光発電の導入状況

これで見ると、2013年辺りからの増加が顕著なのでこの20年後として2030年前後にはリサイクル技術が確立されていればタイミング的にちょうどいいかもしれない。どちらにせよ、少し先の未来ではある。

また環境事業では樹脂サッシも扱っており、温暖化への対応から窓ガラスもアルミサッシから断熱性の高い樹脂サッシへの切り替えが進めば、これもプラスに作用しそうである。

事業構造の転換期であり、既存事業から上手く切り替えて成長路線に乗れるか大事な時期であると言える。

トクヤマのまとめ、評価

事業ポートフォリオの転換期なので、順調な成長曲線を描いていくのかどうか読めない。

ただ、多分野に渡り製品を展開しているので大転けし辛いとも言えるかもしれない。

特に、半導体関連の需要は上下あれどこれからしばらくは上がり続けていくだろうし各事業でえた利益をきちんと次の研究・投資に回していければ悲観する点もそんなにないのかなあと感じる。

国内での売上比率が高いのは、内需が段々とシュリンクしていくことが見込まれる状態なので不安要素である。

ただ、それならそれで海外により比重を移していけば良い話なのでそこまで悪いことだとは思わない。むしろ余地があるとも言える。

トクヤマのサイトに研究開発 についてのページがまとめられている。

その中で、製品開発物語が載っていて開発者の人たちのインタビューがある。商品開発と研究という会社の屋台骨を支えている人達にフィーチャーしてくれるのは、会社としてのそこを大事にしていくという姿勢が感じられて好感が持てる。

賃金や待遇面ではもちろんだが、数字には出にくいこういうところも評価していきたい。

余談だがソーダ灰について、おぼろげながら名前だけ覚えているソルベー法の説明をWebで見返したりすると熱くなる。

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