RANGEを投資にも生かす
これは投資本ではない、だが書いてあることは投資にも結びつくなあと思ったので紹介したい。
(なんでもかんでも、投資に結びつけるなんて下品だと思うが当てはまると思ってしまった。)
本の内容は「親切な学習環境」と「意地悪な学習環境」に分けて、物事の習熟の概念を捉え直している。
本書で言う「親切な学習環境」は、行為を繰り返すことができてそれに対して細かいフィードバックがあるようなもののこと。
例えばゴルフやチェスなどの競技や外科医の手術の用な環境のことだ。
「意地悪な学習環境」とは、前提条件が覆ったり周囲の状況によってフィードバックが変わるもののこと。
例えば精神科医や人事担当者、ベンチャーキャピタリストなどが直面する環境のことである。
「親切な学習環境」の領域では早くから専門に特化して繰り返し練習することでトップになっていくが、
「意地悪な学習環境」においては専門に特化することが逆に弊害を及ぼしたり、さまざまなサイドプロジェクトを行なっていたりして幅のある人間が成果を出すことがある。
これらの領域では新しいアイデア同士を結びつけ、領域を超えて考えることができる概念的な論理能力が必要になる。
一見異なる物に共通する構造を見抜くこのような思考のことをアナロジー思考と呼んでいる。
これはつまり、別の似ている構造に何かを喩える能力が高いと言うことになる。
この辺りまできて感のいい人はもしかすると気づいているかもしれない。
投資の名人であるバフェットとマンガーの書籍を読んでいると、二人ともめちゃくちゃ比喩を使うのである。
比喩は、二つの異なるものが実はそっくりであることを示してわかりやすくする効果を持っている。
これを多用するということは、この本で言われているようなアナロジー思考の能力が高いということになるまいか。
スペシャリストが嵌る罠
もう一つ読んでいて面白いと思ったのが専門家の判断が必ずしも素人の意見より優れているとは言えないという趣旨の章である。
専門家は「専門にしていることの専門家」であるが故に、専門の外に原因がある場合を見抜くことができにくくなる。
例えば、腰が痛くて病院に行くと腰を診てもらうことになるが、本当の原因は背中の椎間板ヘルニアだったりするようなことだ。
これは実生活でも体験がある。私は去年の一時期耳鳴りが止まなくて耳鼻科に通っていた。耳鳴りのせいで平衡感覚を失って立てなくなって病院に運ばれたりした。
耳鼻科や救急の先生は原因は自律神経の失調と言っていて、セカンドオピニオンを聞きに行ってみても同じ診断だった。
そんなある日、歯が痛くて眠れなかった。少し奥歯の方が腫れていたので翌日歯医者に行かなければと思った。
すると、ワイフが言った「歯からの細菌感染で耳鳴りが怒っているんじゃないの?」
そんなバカなと思っていたが、翌日歯医者に行って奥歯に溜まっていた歯垢(恥ずかしい)をとってもらうと耳鳴りはパタリと止んだのだ。
専門的領域の判断に従っているだけでは判断できないことがある、これも相場によくつながる。
リーマンショックやITバブルの崩壊も予想できなかった、あるいは正しい判断ができなかったりしたのだ。
こういうことがあるので、素人の浅知恵と笑うなかれという話でもあって面白い。(市場でプロにアマチュアが勝ることがあるのと同じように)
投資成績の改善
「超予測力」を書いたフィリップ・E・テトロックとの話も出てきていた。
その中で直接的に投資成績を改善するためのメソッドも紹介されていた。
ざっくりとしか触れられていなかったが、根底にある構造が似ていることのリストを作ってそれに基づいて投資することのようだ。
アナロジーによって、似た状況・環境を見極めて投資に生かすということが大事らしい。
読んでいて面白い箇所が他にも随所にあったので暇な人は是非読んでみてほしい。